第1章
2019年BeOneMountainClubを立ち上げて以来、入門向けのトレーニングに適した岩場が少ないことに悩んでいました。
奥穂高、剱岳、アルパインルートを目指すメンバーはじめの一歩、基礎トレーニングの場所として日和田山の岩場を利用していました。
日高市所有の場所でクライミング禁止なのは承知していましたが、はじめての人がトライできるグレード、高さ、岩が安定性、支点がしっかりしている岩場が近くに
なく後ろめたさを抱えながら利用していました。
日和田の岩場での事故は、過去にも複数ありましたが、2024年連続して事故が発生、地域の方からクライミング禁止を徹底して欲しい声が上がりさらに厳しい禁止になりました。
困った、なければ作るしかないのかな?日和田の岩場は、シングルピッチですが、理想は、マルチピッチ、ターゲット本チャンに近く適度なグレード、いろいろ探し鹿岳南壁にたどり着きました。
オリジナルの記録を見ていないので詳細不明ですが、1980年代に1本のルートが引かれたその後は、数えるほどの記録しか見当たりませんでした。
登られた記録も2度と登りたくないという感想のものばかり、手つかずの状態で守られたのは、ネット情報がガードの役割を果たしてくれたのだと思います。
なければ作るしかないと言いつつも、クライミングルートの開拓なんてやった事もない。ボルト打ちもお試し1、2本遊びでやった程度。
A0、A1+Ⅲ、Ⅳ級ルートで登った人がいるし、ボルト打ちながらなら何とかなるよ!と仲間の横山さんを誘って始めたのがはじまり。
取り付きは、記録があるのでスムーズに到着、錆び、リングが飛んだ、ボルトが連打されている。
昔の人は、ジャンピングでやったのだから、振動ドリルとアンカー用意すれば何とかなるだろう!
プリクリップ交えアブミで登る事十数メートル、レッジの終了点にビビりながら到着!
偵察だから何本かリボルトして終わり、軽いノリで作業を始める。振動ドリルにビットをセット、あれ?全く刃が立たない、表面をぐりぐりやるだけ。
手打ちでこれだけのボルト打ったのだから、今どきの電動工具でできない筈がない?
2人で交代しながら5時間格闘、10mmボルト1本設置してノックダウン。
アンカーだのケミカルだの用意したのにどうしよう、普段の生活で必要ないものだし。甘かった!
その昔、谷川岳でボルトを打った大先輩たちに相談しても2人がかりで5時間ボルト1本とは程遠い返事。
仕事でアンカー作業をしている仲間に聞くと、振動ドリルと比べてないからわからないけどハンマードリル使っているよ。
振動ドリルだだと壊れちゃうよ!
なにぃ!なんだ!ハンマードリル買わないとダメなの、ドリルビットも規格が違うから、この先何本つかう?
アンカーの種類は?設置してすぐに強度が欲しいからボルトを締めると拡張するウエッジアンカーしかない。
ケミカルアンカーだと、設置後の硬化時間、これは想定内。ノズルの中が硬化するから使うたびに短くするか、交換らしい。
一通り用意したけど”かさ張る”重い。シングルピッチならともかく、7ピッチ8ピッチのルートだと難しい気がする。
色々用意したりしたが、アンカーに関する知識のなさを痛感する。
勉強しなおし、作業も根本からリセット、工具のラッキングやら落としたら終わりだしハンマードリルだの予備バッテリーだの
アンカーもかさ張るから何が良いのか?試行錯誤するしかない。
まずは、アンカーの基礎知識、建設業界だと建物が完成してから施工するアンカーをあと施工アンカーと言って、日本建設後施工アンカー協会
という団体が資格認定、製品、技術の標準化を推進している。
資格が無くても施工できるけど、大手からの仕事だと有資格者でないと仕事させない現場もあるらしい。
岩壁にアンカーを設置するのに資格はいらないと思うけど、アンカー施工というものを知るためには、最低限の知識としてはあった方が良い。
今回使う10mm12mmまで施工可能な資格、あと施工アンカー施工士2種の資格取得を目指すことにする。
還暦をとうに過ぎていることもあるが、勉強をする能力が著しく低下している。
落とすための試験では無いので決して難しい内容ではないが、理解力、記憶力、集中力、頭にはいらない。
取得までは、分厚いテキスト、1日の講義、試験だが、おもしろい内容もあって良かった。
ウエッジアンカーは、建設資材としての一般用語、PETZL社からその昔、グージョンという名前で販売されていたようですが
今は、クールという商品名。
アンカーは建設資材なので建設業界でメジャーな公共工事にも採用されている認定品は情報量が多い。
海外勢だとHILTI、フィッシャー、国内だとユニカ、サンコーテクノという名前が出てくる。
強度評価はどのようにしているか、PETZL社のアンカーボルトの強度表記は、50hPaコンクリートでテストした評価。
圧縮強度が50N/mm²の高強度コンクリートという高層ビルやダムなどで使う高品質なコンクリートらしい。普通はその半分。
自然石に設置することを前提として販売していると思うが、岩質自体のバラつきが大きく、評価しようがないという事だと思う。
アルパインクライマーは、土台となる岩の強度、安定度はわからないという現実を受け入れる必要があるということだ。
人口壁でのクライミングとの大きな違いという事になる。
まあ、危ないから乗り越えた時の達成感や喜びが、やめられないし、安全過ぎるとクライミングではなくなってしまう。
リスタート、ハンマードリルを用意、今度は、リングボルトルートはやめて、もう一つの脆岩トラバースルートに挑戦。
前情報通り、不安定な岩、技術より運だ、カムを決め、ハンマードリルを回す。前回の苦労が嘘のように穴が空くのだが、10cm位の穿孔で
物凄く硬い層がある。15m位のピッチでドリル何本使ったかな?
ウエッジアンカーも調べる前にクライミングサイトで買ったのは、亜鉛メッキのスチール製、屋内用途、安い。
屋外用はステンレス製、スチール製の2倍のお値段、鹿岳は塩害の影響がないからSUS316、SUS304ステンレスでOK。
設置した時の強度は、スチールもステンレスも同じ、環境省の鎖場などの指針だと基本は、ステンレス、やむを得ず使用した時は、メンテして
使いなさい。というものだ。後ろめたさの気持ちもあるが、もったいないからハング下などの雨の影響が少なそうな場所でつかうことにする。
半世紀近く前に設置したリングボルトだって優しく使えば大丈夫なのだからその3倍くらいの埋め込み量、倍の太さを考えると荒っぽく
扱わなければ大丈夫と勝手な論理。一通りルート整備が終わって余裕があったらメンテだな。
はじめはカムで支点をとれる場所はカムでと思っていたが、何回も同じ場所を登り浮石ホールド、スタンスを落とすうちについついボルトが増えてしまった。
巻き込んだ手前、横山さんにボルト高いからケチケチしようとも言えないし、工具、アンカー重いし、荷揚げすると時間かかるし、落ちたくないから。
やっとの事で1P目完了、目の前には、短いけど核心が、残置支点とカムで補強して横山さんにお願いする。
空中に飛び出すスタートなのでグランドしないから、ビレーステーション新品だから大丈夫と送り出す、ガラガラと岩を落としながら見事突破。
灌木でビレーしてもらい重い工具を渡す。信頼できるアンカーを打ってもらい登るのだが、足元が切れ落ちていてヤバイ、グランドフォールしないなんて
言っている場合じゃない、A0したくても支点ないのでズルもできない。離陸して足元がガラガラ崩れビビリながら突破。ボルダーみたいなムーブ。
少し登り2P目ビレーステーションはスカイフックとナッツで補強して設置。ランナーの支点は、降りると時に後回しにした。
3P目、記録によるとこの先難しい場所はない事になっている。
一日1ピッチ出来ればいいかな、とりあえずハンマードリル使えば穴が空くことがわかった。